空飛ぶテント

2017年1月24日続き
夕方、追い風の力を借りて1日で190kmも走り、気持ちのいい疲労感の中、野宿しようとしていたところ。

DSC07020_2017012617065655e.jpg
野宿したいんですが、問題はこの風。
地形に起伏もなく開けた土地なので、風を遮るものが無い。
風が強いとテントを張れない。
かろうじて地面が盛り上がっている小山というか丘に隠れるようにテントを張ることにする。
どれほど防風の意味があるのかはわからないけれど。

風に翻弄されながらもテントにポールを通す。
僕が使っているテントは山岳用の軽量テントなので、固定しないと簡単に吹き飛ばされる。
テント固定のため、4隅の内、風上の2点にペグ(地面に打つクギみたいなの)を打つ。
これでとりあえずは大丈夫。

荷物の中からエアマットを取り出し、空気を入れて膨らます。
この作業が毎日めんどくさいんですが、腹筋のインナーマッスルのトレーニングと割り切って取り組んでいる。

その瞬間、
強風に煽られ、テントの隅に刺したペグが抜ける。

テントが風で飛ばされそうになることはよくある。
僕もすぐに駆け出す。
しかし思ったよりも速く、なかなか追いつけない。
徐々に焦りが出始める。
普段なら絶対いつかどこかに引っかかるんですが、ここは見渡す限りの荒野。
引っかかるものが無い。

いよいよ僕も本気で追いかけ始める。
テントが止まる気配はない。
疲れ切った体に鞭を打ち、必死に走る。
テントは少しずつ小さくなっていく。
テントの先は地平線の彼方まで広がる荒野。

赤く染まる地平線に向かって一心不乱に転がり続けるテント。
その光景に力が抜け、足が止まる。
絶対無理だ。

大変なことになったぞと、来た道を戻る。
ショックな気持ちを抑えつつ、状況を整理する。
走って戻る気力はないので徒歩なのですが、日没を過ぎたことで、辺りは急速に暗くなっていく。
追いかけていた時はまだ明るかったのに。

ていうか、どこから来たんやったっけ?

辺りは薄暗がりの荒野。
闇雲にテントを追いかけていたこともあり、方向感覚、距離感覚がよくわからない。
目印になるものもない。
どのくらい走っていたんだろう。
10分か15分か。
迷っている内にも刻一刻と暗闇は深くなっていく。

泣く一歩手前まで焦るも、これは何とか見つかる。
ただ駆け出したとき手に持っていて、途中で投げ出したエアマットを探しに行く余裕は、とてもじゃないけれどなかった。

DSC07021_20170126170657ffd.jpg
さてこれからどうしたものか。

選択肢としては、【ここで一夜を過ごす】か、【ヒッチハイクでどこかの町まで行く】か。
【一夜を過ごす】側の大きな主張は、明るくなってからエアマットを探したいというもの。
また車通りがかなり少ない上、この辺りは数十kmごとに警察や軍による通行者のパスポートチェックがあるエリア。この暗い中、そう簡単に車が停まるとは思えないという意見も説得力のあるものだった。

しかし一方で、この暴風の中、風を凌ぐこともできずにどうやって一夜を過ごすんだという【ヒッチハイク】側の意見ももっともだった。それにエアマットも絶対にどこかに吹き飛ばされているし、仮に見つけ出せたとしても絶対尖った石とかでパンクしてるって、という反論により、流れはヒッチハイクに傾く。

「とりあえず一回ヒッチハイクしてみたらいいんちゃう?」という結論に落ち着き、道路に出る。
もう辺りは真っ暗闇。当然町明かりなどもない。
スマホのライトを懸命に振り、車に合図を送る。
1台、2台……と素通り。
3台目の車が止まる。
なんとその車が乗り合いタクシーという奇跡。

あともう1個奇跡なのが、
ここモロッコ南部のサハラ砂漠エリアっていうのは、ほんっっっとにまともな町がなくて、数十kmに一個、(下手したら百何十kmに一個)、ガソリンスタンドがポツンとあるだけというレベルの過疎地帯なのですが、ただ唯一のちゃんとした町がここから100kmのところにあるのです。
“たった”100kmのところにあってくれたことが本当に幸運に感じるほどの過疎地域ということ。

Screenshot_2017-01-24-15-03-25_2017012617454901a.jpg
それが、昨日の記事でもチラッと紹介した、細く伸びた半島の先にあるダハラという町。
そしてこの乗り合いタクシーがそのダハラまで行くと。
しかも自転車も積めると。
奇跡だ。

P_20170124_194815.jpg
送ってもらう。

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到着。
安宿にチェックインし、力尽きたようにベッドに倒れ込む。
こうして、長い一日は幕を閉じた。

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2017年01月 29日05:53 モロッコ

どうしたものかPageTop追い風に乗って

Comment

大変な状況の中での更新、本当にお疲れ様です。
テントとマット、痛いと思いますがダハラに
呼ばれていたのですかね。ひとまず落ち着いて
から、仕切り直しなさって下さい。

無事でなによりです。晋平さんは幸運の持ち主ですね。
引き続き旅の無事を願っています。

>名無しさん
来る予定の無かったダハラですが、居心地がよくまだのんびりしています。ここまであまり休まず走っていたので気持ちが途切れた感がありますが、また頑張ります。

>とみこさん
ほんとに運が良かったと思います。強風の吹き荒れる真っ暗な砂漠のど真ん中でのトラブルだったので。

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